ポンピングロスを徹底攻略!

ここまでくれば上級編
ポンピングロスを低減するアクセルワークとは!?



 まずはポンピングロスを知ろう

ポンピングロスってどんなもの?
 ポンピングロスとは、一言で言うと「エンジンが空気を吸込む時の抵抗」です。
これは、エンジン内部抵抗の約30%にもなっていて、燃費を悪化させる大きな原因になっています。
しかしこのポンピングロスは、アクセルワークである程度低減することができるのです。
それは一体どうすればいいのか、ポンピングロスが起こる仕組みから順番に解説して行きたいと思います。


ポンピングロスが起こる仕組み
 ではまず、下の絵を見てみましょう。 

            
  スロットルバルブ   アクセル開度小   アクセル開度大

 ディーゼルエンジン、直噴エンジン以外の一般的なガソリンエンジンには、エアクリーナーからシリンダーまでを繋ぐ吸気管内に、スロットルバルブという絞り弁が付いています。
スロットルバルブはアクセルと連動するようになっていて、アクセルを踏むとそれに合わせてスロットルバルブも開きます。
このスロットルバルブを開閉して吸込む空気の量を調節し、それに合わせたガソリンを噴射することでエンジン出力をコントロールしている訳です。

ところがこの仕組みでは、スロットルバルブ開度(=アクセル開度)が小さい時、空気の通り道がとても狭くなる事に気付きます。
まあ、空気の量を調節するには仕方がないのですが、ここで抵抗が起きてしまうのです。これがポンピングロスです。

例えばあなたが息を吸込む時、大きく口を開けて吸込むのと、口をすぼめて吸込むのでは、どちらが楽かすぐに分かりますよね。


負圧からポンピングロスを知ろう
 ポンピングロスを知るには、負圧計(バキューム計又は連成計)があればベストです。
負圧計は、スロットルバルブ以降の吸気管内(インテークマニホールド)の負圧を表示するので、この負圧計の数値がそのままポンピングロスの目安になります。
ここからの解説では「負圧=ポンピングロス」として読んでください。

車に負圧計を付けている方は少ないと思いますが、ここではとりあえず、どんな時にどれくらいのポンピングロスが発生するのか、イメージだけでもつかんでもらえればと思います。


負圧計の数値について
 負圧計の数値は、インマニ内の圧力を示しています。単位はkPaです。
つまり、負圧計が-80kPaならば、大気圧よりインマニ内が80kPa低い圧力ということになります。

そしてポンピングロスは負圧と比例するので
・負圧が高い時はポンピングロスも大
・負圧が低い時はポンピングロスも小
という事になります。


エンジンの状態と負圧のようす
 それでは、アクセル開度やエンジン回転数が変化すると、負圧がどんな風に変化するのかをイメージ図で見てみましょう。
(注:このグラフは実測値ではありません。あくまでイメージとして見てください。)

■アクセル開度と負圧の関係

 グラフを見てもらえればわかりますが、エンジン回転数が一定の場合、アクセル開度が小さい時は負圧が高く(=ポンピングロス大)、アクセルを踏むと急激に負圧が低く(ポンピングロス小)なります。

以下に負圧の目安を書いておきます。
・エンジン停止時・・・・・・・・・・・・・・・0kPa(大気圧)
・アイドリング時(アクセル全閉)・・・-70〜-80kPa
・定速巡航時(アクセル開度小)・・・-30〜-60kPa
・加速、登坂時(アクセル開度中)・・-10〜-20kPa
・フル加速時(アクセル開度大)・・・・0kPa(大気圧)


■エンジン回転数と負圧の関係

 アクセル開度が一定の場合、エンジン回転数が低いほど負圧が低く(=ポンピングロス小)、エンジン回転が高くなるにつれて負圧が高く(=ポンピングロス大)なります。
これは、エンジン回転数が高い程、吸い込もうとする空気量が多くなるので、負圧が高くなるという訳ですね。


■アクセルワークと燃料吐出量の関係

 これは各車の燃調マップで決められているので、全ての車で共通とは言えませんが、一般的な制御の仕方を書いておきます。

まず通常の走行時は、理想空燃比(燃料1に対して空気14.7)に近くなるようにコントロールされています。
そして一定速度で負荷が軽い時は、燃費を良くする為にさらに薄くなり、燃料1に対して空気14〜17ぐらいに制御されます。
しかし、急激にアクセルを踏み込んだり、負圧が極端に低くなった場合、コンピュータは急加速が必要と判断し、燃調を理想空燃比よりも濃く調整します。(パワー空燃比)
これでエンジンは力強いトルクを発生することができますが、燃料消費量は増えてしまいます。


 ポンピングロスと上手に付き合う方法

結局どうやって運転すればいいの?
 さて、ここまでで色々な事を説明してきたので、頭の中がパニックになっている方もいるんじゃないでしょうか?
では、ポンピングロスと上手に付き合うには、具体的にどんな運転をすればいいのでしょうか?

■加速時
 加速する時は、負圧(=ポンピングロス)をなるべく下げるように、アクセルをある程度まで踏み込む必要があります。
しかし、急にガバッとアクセルを踏むと、コンピュータは急加速が必要と判断して、燃調が濃くなってしまいます。
燃調が濃くならない範囲で、負圧ができるだけ低くなるポイントが、ベストなアクセル開度になります。
この時の負圧は-15〜-20kPaで、アクセル開度は1/3ぐらいでしょう。
私のシビックでは、加速時にこの負圧を保つようにアクセル開度を調節すると、一番効率良く加速できるようです。

■巡航時
一定速度で巡航する時は、ポンピングロスを減らす事よりも、瞬間的な燃料吐出量を少なくする事を優先します。
この為には、失速しない程度にアクセル開度をできるだけ小さくしてください。
アクセル開度が小さいという事は、必然的に負圧(=ポンピングロス)は高くなってしまいますが、燃料吐出量は少なくなるので、瞬間燃費が飛躍的に良くなります。


ベストな負圧で加速度をコントロールするには
 さて、これまでに加速時のベストな負圧は-15〜-20kPaと書きました。
しかし、この負圧を保とうとして、いつも同じだけアクセルを踏み込んでいたのでは、交通の流れに合わせた加速ができません。これでは困りますね。
そこで、このベストな負圧を保ったままで、加速度をコントロールする方法を説明します。

■ゆっくり加速したい時
 ゆっくり加速したい時、単純に考えればアクセル開度を小さくすればいいのです。まあこれは当たり前のことですね。
しかし、アクセル開度を小さくするという事は、負圧(=ポンピングロス)が高くなってしまいます。これではベストな負圧にはなりません。
こんな場合は、早めにシフトアップしてエンジン回転を下げてやります。
すると、同じアクセル開度でも負圧が低くなるので、ベストな負圧を保ったまま、ゆっくり加速することができます。

ただし、極端にエンジン回転を下げ過ぎるのも禁物です。
エンジン回転が低過ぎると、まともに加速しないばかりか、ノッキングを防ぐ為に燃調が濃くなってしまいます。

■力強い加速が必要な時
 力強い加速が必要な時や登り坂などでは、アクセルを大目に踏み込みます。またまたこれも当たり前のことですね。
ここで、エンジン回転が低いままでは、負圧はほぼゼロを示します。これでポンピングロスはなくなるのですが、負圧がこの領域に入ると、コンピュータは急加速が必要と判断して燃調を濃くしてしまいます。
これを防ぐためには、シフトダウンするかシフトアップを遅くしてエンジン回転数を上げてやれば、ベストな負圧で加速することができます。

ただしこれは、ギア比や燃調マップの違いで、全ての車に当てはまる訳ではありません。エンジン回転が高くなると、シリンダーの摩擦や機械抵抗も比例して増加してしまうので、かえって燃費が悪くなってしまう場合もあります。
私の経験では、0kPaぐらいまでならシフトダウンせずにアクセルを踏み込んだほうがいいようです。

自分の車の最適な加速ポイントを見つける為には、燃費計と負圧計を付けて、色々な加速方法を試してみる事をオススメします。